『銀蝶渡り鳥』(☆☆☆★)

山口和彦監督作。初見。梶芽衣子東映第一回主演作。
 特に追っているわけでもないのに、山口和彦の作品はかなり観ることが出来てしまっているのが不思議と言えば不思議だが、作品としては水準程度か。山口和彦の安定した職人技術からすればもうひと押しというところ。刑務所帰りの梶が、かつて自分が命を奪った男の妻子に毎月秘かに金を送りながら銀座でホステスを務める。梅宮辰夫、渡瀬恒彦、ここぞという場所で由利徹が登場して場面を奪っていくのだから悪くないに決まっているし、フラワー・メグも可愛いし、それに何といっても梶芽衣子の美しさには見入ってしまうのだから十分な面白さはある。終盤の殴りこみで着物に傘で雨の中を歩く梶を俯瞰の横移動で捉えたショットが素晴らしい。しかし、クライマックスのビリヤード勝負が盛り上がらないとか、梶の原罪と殴りこみが巧く繋がっているとも思えず作品としては散漫な印象。