『893愚連隊』(☆☆☆★★★)

 中島貞夫監督作。劇場やビデオでも観ているので、久々の再見と言えども特に新たな発見はあるまいと観始めたら、やはり引き込まれてしまった。中島貞夫の、底辺で生きるどうしようもないチンピラ達への視線が心地良い。後の作品ではより顕著になる大衆への憎悪はまだ控え目にしてもヤクザ達への視線は天知茂の「親分たらきらいなんや」の台詞に集約されていて、何度見ても痺れる。よく言われている「天皇たら親分たらきらいなんや」という台詞が映倫で切られて「親分たらきらいなんや」になっているという伝説的エピソードだが、DVD版でも切られたまま。しかし、本当にそうなのか?単に台詞の頭を切ってしまうともっと不自然な感じになってしまうので、現行版は新たにアフレコし直した版ではないかと思うのだが。
 それにしても、松方弘樹荒木一郎の初々しさ、跳ね上がりぶりが楽しい。荒木一郎は演技者としてはまだ目立たないながら、やはり型を崩した芝居が明らかに周辺に影響を与え、後に『現代やくざ 血桜三兄弟』で渡瀬恒彦の演技を大きく揺さぶったように本作では松方弘樹の演技に影響を与えていると思う。

893愚連隊 [DVD]

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