『マリリン・モンローはプロパガンダである―平岡正明映画評論集』『ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』

 つい最近まで、平岡正明は読まず嫌いだったが、若松プロの映画評論をまとめた『若松プロ、夜の三銃士』を読んで、こういうものなら抵抗なく読めるな、と思った。勿論、若松プロについてなら松田政男が書いたものの方が面白いのだが。『海を見ていた座頭市』は昨年入手したので、続く映画評論集である『マリリン・モンロープロパガンダである―平岡正明映画評論集』も入手せねばと思っていたところで近所の古書店で発見したので購入。千円也。
 『ユングサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』は、言うまでもなく菊地成孔の初映画評論集。書店に買いに行こうとする前にディスクユニオンに寄ったら新古本として千円であったので、こちらで購入。菊地成孔氏の良さというのは、中原昌也氏同様、『映画秘宝』にも『カイエ・デュ・シネマ』にも(菊池氏はカイエには書いていないようだが)登場可能な両面性を嫌味なく持っているので、シネフィルでもなく映画オタクでもない軽やかさと振り幅が良い。一度『シャーリーの好色人生と転落人生』のトークショーに登場した際の氏を見たことがあるが、「『人のセックスを笑うな』を観て蓮實重彦フル勃起」など、実にいいかげんな軽口をききながら作品の核心に触れて行く様に圧倒された。本書でもゴダールの音楽を語りつつ、映画監督・松本人志論を並立させるあたりが凄いし、そもそも冒頭に、「映画と言えば、『映画秘宝』という雑誌を熱心に読むばかりで(特に、まだ版型が小さかった頃は、毎号ボロボロになるまで読みました)」と書かれていては、同じ!同じ!と親近感を持ってしまうに決まっている。 

ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本

ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本