『山の王者 (エターナル・ラブ)』

molmot2007-02-27

映画美学校特別企画 サイレント映画上映会

 映画美学校「映像翻訳講座」演習科優秀翻訳上映会という触れ込みではあるが、ピアノ伴奏は柳下美恵だし、上映されるのは、 エルンスト・ルビッチの『山の王者』だと言うので滅多に観る機会が無いのだから逃すわけにはいかず早速出向いた。いくらビデオ上映とは言え、ルビッチのレア初期作なので、かなりヒトが詰め掛けているのではないかと踏んでいたが、8割ほどの入りで意外だった。それでも客席には、山田宏一先生と、『人のセックスを笑うな』を撮了したばかりの井口奈己監督という御馴染みのコンビも居たし、ルビッチを楽しもうとする期待感溢れる場になっていた。
 柳下美恵の前説によれば、『山の王者』が字幕つきで上映されるのは戦後初だそうで、ビデオの画質もかなり良いとのことであった。それにしても、ジョン・バリモアの紹介で、ドリュー・バリモアの祖父とだけ紹介してりゃええのに、困った性癖が…とか態々言うところが流石。たぶん家で旦那がそんなんばっか言ってるから…。
 上映はビデオ上映なので、期待しないようにしていたが、マスターが良いらしく高画質で、ビデオ上映のことなど全く気にならなかった。全く予備知識なく観たので、『牡蠣の王女』や『寵姫ズムルン』みたいに豪華絢爛たる雅な世界が展開するのかと思いきや、胸を熱くさせるメロドラマだった。柳下美恵のピアノ伴奏共々、幸福な気分でルビッチを大いに楽しめた。800円で観れたのも良かったし。
 日本では初期のルビッチは全くソフト化されていないが、アメリカでは『山の王者』を含めて『牡蠣の王女 / 男だったら』『山猫リュシュカ』『デセプション』などのDVDが出ているので、そう高くもないので手元に置いておきたいという思いが、初期の作品に接する度に思う。

39)『山の王者 (エターナル・ラブ)』〔ETERNAL LOVE〕 (アテネ・フランセ文化センター) ☆☆☆★★★

1929年 アメリカ モノクロ スタンダード 分
監督/エルンスト・ルビッチ    脚本/ハンス・クレイリー     出演/カミルラ・ホルン ジョン・バリモア ヴィクター・ヴァルコニ ホバート・ボズワース ボディル・ロージング  

 『ミュンヘン』『スーパーマン リターンズ』『ストレンジャー』『天国は待ってくれる』『殺人の追憶』『力道山』『ラストデイズ』『うなぎ 完全版』

34)『ミュンヘン スペシャル・エディション』(スティーヴン・スピルバーグ) 
35)『スーパーマン リターンズ 特別版』(ブライアン・シンガー) 
36)『ストレンジャー』(オーソン・ウェルズ ) 
37)『天国は待ってくれる』(エルンスト・ルビッチ) 
38)『殺人の追憶』(ポン・ジュノ) 
39)『力道山 デラックス・コレクターズ・エディション』(ソン・へソン) 
40)『ラストデイズ』(ガス・ヴァン・サント) 
41)『うなぎ 完全版』(今村昌平) 
42)『鬼畜』(田中登) 

ミュンヘン スペシャル・エディション [DVD] スーパーマン リターンズ 特別版 [DVD] ストレンジャー(トールケース仕様) [DVD] 天国は待ってくれる [DVD] 殺人の追憶 [DVD] 力道山 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD] ラストデイズ [DVD] うなぎ 完全版 [DVD] 火曜サスペンス劇場2 鬼畜 [DVD]
 やばっ、買い過ぎた。


 ギリギリまで仕事して、ラピュタ阿佐ヶ谷での高倉健金田一版の『悪魔の手毬唄』最終上映に向かうが、時間に少し余裕があったので新宿周りで納品に行ったりしていたら、見事に電車一本乗り遅れて、上映開始10分後に着く。それでも諦めきれずに劇場へ向かうが、満席と言われスゴスゴと帰る。
 高倉健版の『悪魔の手毬唄』は、この15年間ずっと観たかったのに。あまりのことに、ラピュタの壁を後ろへ回ってガツガツと蹴ってやろうかと思うも、どう考えても早く来ない自分が悪いので、どうにもならず。しかし、平日の15時とかに来ようと思ったら、色々不義理やら仕事のペースやら何かと面倒な思いをして時間を割いて来てるのに、満席て。どんだけヒマな奴が多いねんと。平日の15時に絶対珍品に違いない渡辺邦男のミステリーを観に来る奴が何でそんなに居るのと。1週間上映があったのだから、さっさと来ていれば良かったと思うのみ。完全に最終日に慌てて見る夏休みの宿題状態の性格が災いしているとしか思えない。しかし、悪いのは自分だけではなく、東映がさっさと千恵蔵の金田一共々DVD出せば済むハナシなのだ。
 それにしても、平日の渡辺邦男でさえこんなんで、田中登をやった日には、どうなるんだろうか。 

 
 で、例によって、観る予定の映画を劇場前で追い返されると、表向きは平静を装いつつ、内心怒り狂っているわけで、その捌け口がバカ買いに向かってしまう。今回は運悪くDVDが何かと安かったのが不味かった。

 
 まずは、中野ブロードウェイで、34)、35)を。共に1800円。
 『ミュンヘン』は、試写会で観たきりだったので再見したかった。一見しただけでも秀作だと思ったが、日を経るにつれ観返したい思いが高まり、廉価版発売まで待つつもりだったが、『シネマの記憶喪失』とか読み返すと、やはり直ぐ観たいなと。で、状態の良い中古が1800円だったので即買い。
 『スーパーマン リターンズ 特別版』も、ワーナーだし廉価版待ちだったが、案外特典付きの方は直ぐに安くならないので、どうしようかと思っていたら同じく1800円だったので。劇場で、タイトルバックの段階で涙が零れてしまい、幼児体験の思い入れのある作品とかのリヴァイヴァルや、リメイクってのは不味いなと思った。なので、ちゃんと落ち着いて見返したかった。後は、例のバカ高いBOXをどうするかで、話題の初収録となる『スーパーマンII (リチャード・ドナー・カット版)』が凄いらしい。NGテイクを強引に使用してるから繋ぎが変だとか、ラストがエライことになってるとか。
 『ブラックサンデー』が1480円であったが、4月だかに1500円の廉価版が出るのでパス。

 
 秋葉原へ移動して、セールやってると聞きつけたので、昨日のうちにどこでやってるかを教えてもらい、出向く。着いてみれば、2年ほど前の正月にも決算セールやってた所で、毎回やってるのかと思っていたが、こういう時期にやってるのかと。
 で、36)〜42)を。かなり抑えたつもりが結果的には散財してしまう。ま、今回買ったのを全部で割れば1本辺り1500円だからと、納得させることにする。
 『ストレンジャー』1200円。オーソン・ウェルズの、と思っていたらコレPDで持ってたことに帰ってから気付く。まあ、正規盤だということで。
 『天国は待ってくれる』千円。ルビッチが正規盤で千円、しかも初めて観たルビッチがコレなので愛着がある。
 『殺人の追憶』780円。特典付きでこの値段なら安い。
 『力道山 デラックス・コレクターズ・エディション』500円。悪い作品とは思わなかったが、そう愛着もないのに、タイムセールで500円とか言うから、周りのヒトが取り合いになってたから、何故か強引に取ってしまう。
 『ラストデイズ』二千円。ガス・ヴァン・サントの三部作はBOXを買うべきか否かと迷っていたが、『ジェリー』も千円で買えたし、好調に安く集めることが出来ている。後は『エレファント』を千円代で入手できれば良い。作品としてもこの三部作は愛着があり、『ラストデイズ』も素晴らしかった。ガス・ヴァン・サントはこの後どうなるのか。
 『うなぎ 完全版』半額とは言え三千円。かなり買うか迷ったが、『うなぎ』への愛着と、今村昌平でディレクターズ・カットって…という思いで買ってしまう。レンタルで出回ってないし、中古も高いので。劇場版より20分の追加が行われている由。深作の『バトル・ロワイアル 特別編』でも思ったが、撮影所出身監督がこれまで作ったことも無いディレクターズ・カットを製作する心境とはどんなものなのかと思う。それを言い出せば、当初3時間あったと言う『カンゾー先生』のディレクターズ・カットも観たいものだ。
 『鬼畜』千五百円。放送時に観て録画もしているが、田中登だし、メイキング映像もあるというし、テレビでの田中登の姿が気になり始めているので。今から思えば、ながら視聴しながら最後のクレジットで田中登か、と思った作品はケッコーあった。

 

 『露出狂の女』『いかせたい女 〜彩られた柔肌〜』

16)『露出狂の女』(塩田明彦) 
17)『いかせたい女 〜彩られた柔肌〜』〔成人館公開題・DVD発売題:痴漢電車 弁天のお尻/一般公開題:デメキング〕(今岡信治) 

デメキング/痴漢電車 [DVD] いかせたい女 彩られた柔肌 [VHS]
 アテネでルビッチを観たら、気分良く帰りは中古ビデオ屋で、ちっともDVDにならないからビデオ版で買って置けば良いかと塩田明彦の『露出狂の女』と、BOXが半額以下になるのを狙っているものの、ちっとも巡り合わないので今岡信治の『デメキング』こと『いかせたい女 〜彩られた柔肌〜』を。夫々300円。

 『シナリオ 1976.08』『シナリオ 1978.02』

27)『シナリオ 1976.08』 (シナリオ作家協会)  
28)『シナリオ 1978.02』 (シナリオ作家協会)  

 27)『性処女・ひと夏の経験』(中島丈博)、『犯される』(佐治乾)、『色情海女』(大工原正泰)。
 28)『ワニと鸚鵄とおっとせい』(山元清多)、『肉体の門』(田中陽造)。
 共に100円。
 27)は、ロマンポルノ特集号で、始まってから五年を経ての変化や問題が各監督、ライターから語られる。インタビューも田中登神代辰巳曽根中生、加藤彰、小沼勝藤田敏八、蔵原惟ニ、山本晋也と豪華。
 
 ロマンポルノとは離れるが、この時期は丁度角川春樹が映画製作を発表した時期となるようで、角川映画のラインナップが書かれている。『犬神家の一族』『いつかぎらぎらする日』『オイディプスの刃』とあるが、これは既によく知られているように、『犬神家の一族』以外は後年形を変えて実現しているものの、この段階ではポシャったものだ。
 
 『いつかぎらぎらする日』は、1973年に東映が監督・深作欣二、脚本・笠原和夫で進めていた『実録・共産党』が中止になった後に角川で引き継がれたもので、タイトルは河野典生の『いつかぎらぎらする日々』からタイトルだけ貰ってきたという形になっている。しかし、角川側のニューシネマみたいなものにしたいという要望と笠原和夫で合うわけもなく、結局製作中止となっている。それはよく知られたことなので良いのだが、この記事中で気になるのは主演が川谷拓三であると書かれていることと、河野典生が<「映画の発表前に題名を借りたいとの連絡があったが、私ははっきりと断った」>というコメントを寄せていることで、角川春樹の強引さが既にこの段階から浮き彫りになっている。それから15年以上過ぎてから松竹で深作と丸山昇一が組んだアクション映画のタイトルが『いつかギラギラする日』なのは、プロデューサーの奥山和由がこのタイトルを気に入っていた為に、前年『幕末純情伝』『ぼくらの七日間戦争2』で初めて組んだ角川春樹に直談判してタイトルだけ貰ってきたもので、監督は同じ深作であっても、『実録・共産党』とは一切関係ない。
 
 『オイディプスの刃』は、監督が当初三隅研次でATGの企画としてスタートし、途中で角川に吸収され、結局村川透が監督となり、松田優作主演でATG系公開作品になる予定だったようだ。実際フランスロケも行ったらしいが、途中で撮影中止となり、10年後に成島東一郎の監督で実現している。