『映画芸術 2007年冬号 第418号』

10)『映画芸術 2007年冬号 第418号』

映画芸術 2007年 02月号 [雑誌]
 2006年ベスト・ワースト号。やはり、映芸が各人のコメントを長文で載せてくれることからも、最も読み応えがある。
 と言っても、表紙にも書かれている通り、“もはや誰も網羅することができない”日本映画の製作本数を考えれば、総合のベストやワーストなど意味がない(『中学生日記』や『セキ☆ララ』の順位の低さを見れば総合点の無意味さが顕著だ)。結局、個々が何をベストに選び、ワーストに選んだか、だと思う。
 映芸の選者も年毎に多少変動があるが、昨年に続いて阿部嘉昭の姿は無く、山根貞男も不在という状況ではあるが、その分新たに、わたなべりんたろうや、松江哲明といった世代が加わったことで、面白い展開になっていると思う。両者含めた数人が『紀子の食卓』をベストに挙げたことで、一気に総合で浮上させているし、まだまだ総合の結果に世間の耳目が集まる以上、こういう流れは重要だと思う。嘗ての『映画評論』で、特定の作家への上の世代の無理解を下の世代がベストに放り込むことで流れを作ったように。