『シナリオ創作論講義/鈴木則文(映画監督・シナリオ作家)・ 映画制作の仕事 』

『シナリオ創作論講義/鈴木則文(映画監督・シナリオ作家)・ 映画制作の仕事 』(シナリオ会館) 

 鈴木則文監督の講義があるとのことで聴講に向かう。2時間に渡って主にシナリオの視点からの映画制作について語られた。
 詳細は省くが、東映時代劇における三幕構成とハリウッド映画のフォーマットの酷似についてのハナシなど面白かった。又、“殺す”という行為における男性・女性の違いを語られたものも、とても面白かった。
 以前から気になっていた、鈴木作品の多くで見られる、階段を使用した主人公を引き立てる手法、階段の優位性について質問したら、平らな場所よりも段差のある場を好む為だと答えられ、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』で顕著な下から上へ追い詰めるという描写なども、光と影と共に上と下という映画的な運動を意識して取り入れているとのことだった。又、階級の象徴としての段差を階段に見立てることでの使用、ヒッチコックの『断崖』『汚名』を例に挙げての階段の使用などを語られ、鈴木作品における階段の存在の重要さを確認できた。

 
 終了後、場所を移して8人ほどで鈴木監督のハナシを伺ったが、流石に向かい合って直接ハナシをさせていただくのは、なかなか無い機会なので良かったにしても、極度の緊張で胃が痛くなる。いろいろタメになるハナシを伺い、オコトバを頂く。なので中身は書かないにしても、「ポルノを学ぶなら、ボクの作品とロマンポルノを観なさい」など、至言が溢れていた。
 ついでに、普段はこーゆー機会があっても滅多にお願いしないのだが、鈴木則文監督だけに、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』の海外盤DVD(日本盤は今秋発売)にサインを頂く。

 “美は乱調にあり”という鈴木監督らしい一文付きで頂き、ひたすら感謝。
 鈴木監督は、普段自作がソフト化されて送られて来ても観ないそうで、誰かに直ぐあげてしまうので手元には自作のビデオなどは殆ど無いとのこと。その分、上映がどこかでされれば出向いて観るそうで、シネマヴェーラで鈴木監督の姿を何度も客席で目撃されていたのも納得できる。
 『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』の海外盤DVDを差し出すと、「何だい、こりゃ?こんなもん出てんのかい」と眺めた後で、直ぐに「コレ観たか、映画館で観たか、どこの劇場で観た、面白かったか」と矢継ぎ早に聞いてこられ、東映出身の方とは学生の頃からお世話になることが多かったが、エログロ路線の一連の作品について聞くと、露骨に嫌な顔をされたりする方もケッコー居たので、鈴木監督の自作への思いは珍しく思えたが、作品を観ればわかるが、それだけの自信を持って言えるだけの後世に残る作品に仕上げているのだから、当然とも言える。シネマヴェーラでの特集上映の楽日の最終回の『エロ将軍と二十一人の愛妾』は、満席立ち見の出る大盛況だったことを伝えると、とても喜んでおられたのが印象的だった。
 3時間半に渡って鈴木監督のハナシを伺うと、途端に猛烈にまた各作品を観返したくなる思いに駆られ、シネマヴェーラでの至福の時間を思い出した。