映画 「玉割り人ゆき」「変態家族 兄貴の嫁さん」「絶倫絶女」

笑うポルノ、ヌケるコメディ (シネマヴェーラ渋谷

 あれだけ「次郎長三国志」で煽りに乗っておきながら、その後も何度も行きたいという思いを抱きつつその都度機会を逃してきたシネマヴェーラ渋谷にようやく初めて行く。Q-AX、ユーロスペースシネマヴェーラ渋谷の全劇場で観た上で、このミニシアターのシネコンの感想めいたものを書きたいと思っているが、未だQ-AXは3館中1館しか行けていない。現段階ではユーロスペースが、移転前同様座席間の前後間隔が狭いとか座席が硬いとか思うのだが。まあ、ソクーロフとかを身動きできないようにして観ろということなのかとか、端で観ればそうでもないとかあるのかもしれないが。それ以外は至って快適で心地良い空間で、近く丸一日Q-AXビルで過ごして溜まっている映画を一気に消化しようかと。
 そー言えば、Q-AXビル前で「ヨコハマメリー」のチラシ配ってたヒトが居たので何と思ったら、Q-AXシネマでの上映も決まったようで、傑作「ヨコハマメリー」は口コミで幸せな映画になっていっているようだ。
 で、シネマヴェーラ渋谷の特集上映は、蓮實重彦がラインナップの半分は選んでるんじゃないかというぐらいな作品が毎度並んでいて感心するが、渋谷じゃなければ良かったのに的な声を消してくれるだけの映画館として永続してほしいと思う。 
 と言うのも、二晩寝ずにフラフラ気味ながら、今日で終わるいまおかしんじの「絶倫絶女」だけは観ようと思っていたところ、ポンと夕方で予定が空いてしまい、かと言って1800円払って新宿国際名画座でノンビリ過ごしたり、転寝できるわけもないので、やはり最終回千円で観ることにして、ではそれまでどうするか。渋谷のミニシアターでは観る予定の作品が溜まりまくっているが、かと言って油断すれば直ぐに寝てしまいそうな状況で迂闊にミニシアター系の作品を観るのは危ない。という時に、シネマヴェーラは今日は何をやっていると見たところ「玉割り人ゆき」と「変態家族 兄貴の嫁さん」の素晴らしい二本立てなので、即向かう。「玉割り人ゆき」は半年程前にラピュタ阿佐ヶ谷で観たばかりだが、例によって満員で、自分は前方の端の席から首を曲げて、このシネマスコープの華麗な傑作を観たので、再見したかった。シネマヴェーラ渋谷では以前と対照的に観客は疎らで、思わず既に劇場の客席数が、上映作品を求めて来る観客と見合っていないと思われるラピュタ阿佐ヶ谷との交換を求めたくなるくらいで、この傑作をガラガラの席でじっくり楽しめたのは、過ぎた贅沢と思いつつ、劇場側の心情を全く無視すれば悪いものではない。眠気も全く訪れずにひたすら画面に見入っていた。

98)「玉割り人ゆき」(シネマヴェーラ渋谷) ☆☆☆☆

1975年 日本 東映京都 カラー シネスコ 64分  
監督/牧口雄二    脚本/田中陽造    出演/潤ますみ 森崎由紀 大下哲矢 奈辺悟 川谷拓三

 娼婦、テロリストと来れば既に絶賛体勢は整っているのだが、牧口雄二の的確な演出で、潤ますみの魅力に見入ってしまう何度観ても傑作だと溜息をつくのみ。川谷拓三への愛情も嬉しい。

99)「変態家族 兄貴の嫁さん」(シネマヴェーラ渋谷) ☆☆☆★★★

2005年 日本 国映 カラー ビスタ 分 
監督/周防正行    脚本/周防正行    出演/風かおる 山地美貴 麻生うさぎ 大杉漣 下元史朗 首藤啓
変態家族 兄貴の嫁さん [DVD]
 小津への遥かなるオマージュが結実した秀作で、単なる模倣、パロディだけでない周防正行が小津への拮抗を果たしたことで秀作になりえている。

100)「絶倫絶女」(新宿国際名画座) 不完全鑑賞につき評点なし

2006年 日本 カラー 国映/新東宝/Vパラダイス ビスタ 分 
監督/いまおかしんじ    脚本/守屋文雄    出演/吉岡睦雄 藍山みなみ 下元史朗 松原正隆 佐々木ユメカ
 久々に新宿国際名画座に行くが相変わらずで、魅力的な画面が次々と展開しているにも係わらず、何かと気分を削がれる。何より劇場前を通った際に確かめた筈の上映時間前に入ったら既に「絶倫絶女」は始まっており、どうやら頭数分を見逃したと分かった段階で、こちらが時間をよく確かめなかったのが不味かったと思ったり、やはり一般公開まで待てば良かったと思いつつ、平沢里菜子の登場が、「嫌われ松子の一生」にちょっと土屋アンナが出ているようなものか、などとも思いながら、そーいえば平沢里菜子は今度、赤裸々ドキュメンタリストと何かやるらしいので楽しみだと思いつつ、「絶倫絶女」の「丹波哲郎大霊界 死んだらどうなる」での丹波義隆前田吟の役回りとの類似性を思ったりしつつ、自分はいまおかしんじの作品は一度観ただけでは、魅力を掴みかねることが多いので、やはり一般公開の際に見直した上でなければこの作品には何も言えない。