映画(TV/VIDEO/LD/DVD) 『愛しい人妻 ひと夏のたわむれ』『白い娼婦 花芯のたかまり』

64)『愛しい人妻 ひと夏のたわむれ』(DVD) ☆☆☆★

2001年 日本 レジェンド・ピクチャーズ カラー スタンダード 66分 
監督/今岡信治    脚本/今岡信治    出演/美咲レイラ 小宮詩乃 飯島壮 堀崎太郎 深澤和明
愛しい人妻 ひと夏のたわむれ [DVD]
 女が走る作品だった。
 開巻の子連れの女が車がどんどん走っていく道を背に歩いてくる長回しから引き込まれた。
 
 テレクラで知り合った若い男のアパートの一室に転がり込み、三人の生活が始まる。
 子連れの女の過去は語られない。ただピンサロに出向き客を取ろうとする。男はスーパーで漫然とバイトしている。子供は隣の水商売と思わしき女に預けている。女もただ漫然と子供と向き合い過ごしている。

 夏の暑さが画面から伝わってくる。冷房のないアパートの倦怠感が心地良い。
 公園での花火、食事といった何気ない描写が素晴らしい。

 この作品に出てくる女は走る。
 美咲レイラは、冒頭のテレクラから逃げていく男を子供を抱えたまま走る。挙句に男を抜いてしまうまで走る。客に逃げられた時も走る。しかし転倒して泥に突っ込んでしまう。
 隣に住む女は、セックスの後に目覚めて男が居ないことに気付き、裸足で飛び出して走る。しかし、ウンコを踏んで萎える。
 美咲を迎えに来た夫を追い返したものの、子供が父に走り寄ったことから、美咲も走って夫に抱きつく。
 本作の女達は、感情が増大した時、直ぐ走る。その走る姿が素晴らしい。殊に美咲の汗が胸に染み、巨乳を揺らしながら、畦道を走る姿が、どうしようもなく感動的だ。
 ただ、美咲らが去った後の終盤は蛇足で、そこで評価が下がったが、見応えのある秀作だった。



65)『白い娼婦 花芯のたかまり』(DVD) ☆☆★★★

1974年 日本 日活 カラー スコープ 70分 
監督/小沼勝    脚本/桃井章    出演/山科ゆり 青山美沙 大江徹 大野木克志 芹明香
白い娼婦 花芯のたかまり [DVD]
 芹明香が出てくるだけで良い、という物言いを友人と話していてすることがある。又は中島葵でも同様のことを言ったりする。
 ようは、つまんないなと思いながら観ていても、突如1シーンでも彼女達が出てくると、途端に映画が跳ね上がる。それだけの魅力を持った女優だということだ。林由美香もその系列に入るし、佐々木ユメカや、平沢里菜子もそうだ。別に敢えてロマンポルノ、ピンク女優を挙げているわけではなく、主演もすれば助演も、それこそ1シーン出演もする軽快さを持たせることのできるジャンルが限られているからだけのハナシだ。
 
 開巻の自転車で踏む柿のアップや、足の無い弟が足の薬指が痒いと言うので、山科ゆりが何もないシーツの上を掻いてやる素晴らしさだとか、部分の描写に際立ったものがあるものの、作品としては魅力に欠ける。
 後半の主人公が開き直ってからは面白くなりかけるが、そこで終わった。
 
 芹明香は、弟の為に売春する女子高生を探している山科が見つからないので仕方なく用意した女で、風俗店の前で声をかけられて、女子高生?と驚きつつ了承するあおりのショットと部屋に来てからの2シーンのみの出演だが、相変わらず魅力的で、女子高生やと言うてるのに、豪快に脱いで、履いてる下着は真っ赤だし、仕事あるから早くして、とまで言う。車椅子の弟がもう一度着てやり直せと言うと、案の定、何やと〜と突っかかっていって、車椅子を壁にブチ当てるわで、流石芹明香だと喜びながら観ていた。

 白で統一された部屋や山科の衣装、クリーニング店で勤める大江徹とか、面白くなりそうな意匠に満ちていながらそうはならなかった。全篇に流れるクラシック曲も不快。