古本 『情痴殺人事件』『営利殺人事件』『禁断の25時』『暴行百科―ドキュメント』

44)『情痴殺人事件』 斎藤充功 ・土井洸介 (同朋舎出版) 
45)『営利殺人事件』岡田晃房 (同朋舎出版) 
46)『禁断の25時』酒井あゆみ  (ザマサダ) 
47)『暴行百科―ドキュメント』佐藤秀郎 (現代史出版会) 

情痴殺人事件 (TRUE CRIME JAPAN) 営利殺人事件 (TRUE CRIME JAPAN) 禁断の25時 暴行百科―ドキュメント (1980年)

 ラピュタ阿佐ヶ谷から高円寺まで歩きながら、深夜の古書店を物色して、実録犯罪モノばっかり何故か買う。全部で二千円いかないぐらいで納まる。

 44)、45)は、このシリーズは発売時にリアルタイムでよく読んでいたが、シリーズ末期の上記2冊は、そのうち買おうとしつつ忘れていたので、500円だしと購入。

 46)「東電OL事件」の被害者と同僚とか書いてあるから、中身は確認できなかったものの、300円だからと買ったら、どうもアテが外れた模様。まあ、300円だからいいかと。

 東電OL事件は、まあ、リアルタイムで覚えてはいるものの、さほど興味を惹かれなかったのは、報道が過剰化していたからか。佐野眞一の『東電OL殺人事件』を読んだのも、文庫化されてからという遅さで、興味を惹かれる契機となったのは、やはりと言うか結局と言うか、映画側からの示唆に富む言葉を読んだからで、それは2000年の『スタジオ・ボイス』の特集「映画を作る方法2」での田中陽造×荒井晴彦の対談『ロマンポルノの方法論とその実践』で語られた田中陽造の言葉からだ。

<田中 ちょっと前、東京電力のOLが殺されたでしょ。何であんなに偉い人が夜毎街に立ってたのか、結局よく分からない。あの人が立ってた宇田川町の路地は昔、川だったらしいんです。川だったところに立って、年配の客しか取ってなかった。そこから類推していくに、彼女は昔よく父親と川遊びをしていて、その父親を失っちゃったんで、そこに立ってた父親を殺したんじゃないか、と。
荒井 作ってない?田中陽造的世界を(笑)
田中 いやいや。「売春婦が主役でその周辺の話、面白いからやろうよ」って言えば、すぐ映画になったんですよね。でも今、そのくらいの衝撃では映画にならないですね。それがロマンポルノ的時代と今の違いだと思うんです。この間も、女子大生が刺し殺されて、殺しを依頼した犯人は自殺しちゃったよね。要するに、別々なところで二人が死ぬわけだよ。映画的な距離感のあるいい話で。昔なら簡単に映画になってたんですよ。それがもう、ならない。>


 ロマンポルノへの言及も物凄く面白いので長めに引用してしまったが、コレで、それまでそう気にもしていなかった、東電OL事件に強烈に興味を持った。この対談を読んだ井土紀州が、次の『映画芸術』で感服していた。
 脱線ついでに言えば、この号の特集は本当に充実していて、五段組みの細かい文字でロングインタビューを突っ込み、両サイドには、田中、荒井の詳細なフィルモグラフィーが載っていて、資料性も高い。他のページでの『匿名の「作家」、大和屋笠』も良くて、高橋洋塩田明彦・井川耕一郎の鼎談も面白いが、今となっては、高橋洋の紹介文に<現在、精神病院を舞台としたニューロティック・メロドラマ『愛の構造』(万田邦敏監督)に取り組んでいる。その後待望の監督作『女優霊2』にかかる予定>とあるのが痛々しい。『ソドムの市』の充実した佳作ぶりを観れば、商業枠での監督作をもっと観たくなるのは当然だけに、幾つか聞こえてきた予定されていた監督作が実現していればと思わずにはいられない。
 47)80年発行の本書では、当時の暴行殺人を主に取り上げたもので、今となっては知らない事件が多いので買っておく。「羽田の女高生殺し−ホットパンツに狂った男」「練馬・未成年グループ輪姦事件−ダメな子集団のルール」など、なかなか奮ったタイトルが良い。