『明日の太陽』

明日の太陽』 (YOU TUBE

1959年 日本 松竹大船 カラー 松竹グランドスコープ  6分
監督/大島渚    脚本/大島渚    出演/津川雅彦 十朱幸代 山本豊三 桑野みゆき 杉浦直樹 九条映子 千乃赫子 川津祐介 花ノ本寿 北條喜子 朝海圭子 松本錦四郎 
太陽の墓場 [DVD] 
 大島渚のデビュー作と一般に言われる『愛と希望の街』だが、実際にはそれ以前に短篇の監督をしている。それが『明日の太陽』であり、大島渚の実質的デビュー作と言って良い。何せ撮影は川又昂だし、助監督には田村孟がついているのだから、これ以降の大島作品を支えたスタッフが既に集まっているだけに、たかが短篇と無視するわけにはいかない。
 この作品は、大島の大規模なレトロスペクティヴでは上映されたことがあったが、長らく観ることができず、自分は昨年になってようやくフィルムセンターで『日本の夜と霧』の併映で上映されたので、それを観る為だけに既に何度も観返している『日本の夜と霧』にも付き合って観に行った。もう二度と観れないかもしれないと必死に観たが、幸いなのかどうか、松竹からその後出た大島のDVDに『太陽の墓場』の特典として収録された。それが今やYOU TUBEで丸々置いてあるのだから憎たらしいが、ま、大島渚については、ソクーロフの大島ドキュメントなどが完成すれば良いが、既に新作の更新は難しいと思われるので、常時連呼しておきたいし、少しでも人目に触れてもらいたいので書いておく。
 『明日の太陽』は、ご挨拶映画とも呼ばれた新人俳優紹介を目的とした短篇で、赤いパラソルを持った十朱幸代を狂言回しに、津川雅彦桑野みゆき杉浦直樹、九条映子、川津祐介といった若手俳優夫々に違ったシチュエーションを与えて、ちょっとした演技をさせるというもの。
 特に津川雅彦桑野みゆき川津祐介は、『青春残酷物語』『太陽の墓場』『日本の夜と霧』で大島と組んでいるので、それ以前の大島とのコラボという意味合いでも興味深い。又、杉浦直樹や九条映子を大島が撮ったということも意外だけに、様々なシチュエーションを大島がどう演出しているかを観て行くと、大島の監督としての資質の一端が伺え、又、これまでの大島のイメージを覆すものもある。
 ちなみに大島は、本作で撮った九条映子について、寺山には悪いけど、自分が撮った方が遥かに良く撮れていると後に語っている。