『映画秘宝 2010年9月号』

映画秘宝 2010年 09月号 [雑誌]

映画秘宝 2010年 09月号 [雑誌]

 発売中の『映画秘宝 2010年9月号』の、「『芋虫』と言えない『キャタピラー』&これが戦争被害者映画だ!」という特集で、若松孝二監督の新作『キャタピラー』のレビューと、今月24日に上映される現在開催中のPFFでニュープリントが作られた若松監督の幻の作品『逆情』『新宿マリア』の紹介を書かせていただいています。
 『キャタピラー』の方は、若松監督が当初構想していた江戸川乱歩の『芋虫』についても、以前インタビューで伺った内容も含めて書いていますので、読んでいただければ。

『映画秘宝 2010年8月号』

映画秘宝 2010年 08月号 [雑誌]

映画秘宝 2010年 08月号 [雑誌]

 発売中の『映画秘宝 2010年8月号』に、現在シネマヴェーラ渋谷で行われている特集上映「足立正生の宇宙」に合わせて、「日本インディーズ映画の父 足立正生を発見せよ!!」という映画監督・足立正生のヒストリーを書かせていただいています。
 全て事実に沿っていますが、若松プロでの脚本家としての活動・政治活動は隅において、映画作家足立正生を中心に、かなり個人的な史観で書いていますので異論がある方もいらっしゃるかもしれませんが、近年の若松孝二の再三の特集上映、再評価とは裏腹に足立正生は全作上映が十年に一度しか行われず、ソフト化も大半の作品がされていない状況ですので、とにかく一人でも多くの方に足立正生の作品を観ていただきたいと思って煽らせていただきました。
 それから「この足立正生を見逃すな!」という欄で、今回上映される作品の中からオススメ作品をセレクトして紹介しています。どうも政治方面で足立正生を語ると『赤軍PFLP 世界戦争宣言』や『略称 連続射殺魔』ばかりが重要視されたり、十年前の全作上映でも再評価されたのが『噴出祈願 15代の売春婦』だったりで、果たして初めて足立正生という名前に触れて足を運んだり、あるいはピンク映画を初めて観る観客が、これらの作品で続けて足立全作品を観たいと思うのかどうか、かなり疑問(風景しか映ってないからね)だったので、現代から足立作品を観るのなら、自分が十年前にようやく足立正生の全作を一挙に観ることが出来た時に最も感銘を受けた『性地帯 セックスゾーン』『叛女 夢幻地獄』『性遊戯』あたりから入るのが良いのではないかと傲慢に思い込んで、これらの作品を推させていただきました。
 尚、今回は上映されませんが、本文中で触れていた足立正生が監督した大島渚の『絞死刑・予告篇』は↓で観ることができます。

 それから、今回上映される若松作品の方は有名作が多いとは言え、未ソフト化作品の『性犯罪』は上映自体もかなり稀な作品ですのでお見逃しなく。


 それから、6月26日より公開される入江悠監督の『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』のレビューも書かせていただいています。これは上半期の日本映画の締めに相応しい素晴らしい女子青春映画です。ヒップホップに何のこだわりもない自分ですら、上映後の道を軽快に♪シュッ・シュッ・シュッ!!と思わず歌いながら帰ったという奇特な出来事が発生した作品で、入江監督のプログラムピクチャーの正しい継承ぶりは、そこらのプログラムピクチャーもどきのニセモノとは全く違うということが観ていただくと一目瞭然かと思います。

『シナリオ 2010年 05月号』

今号は新人シナリオコンクール最終審査結果発表号なので商業映画脚本は『パレード』(行定勲)のみ掲載。

シナリオ 2010年 05月号 [雑誌]

シナリオ 2010年 05月号 [雑誌]

『血を吸うカメラ』

 マイケル・パウエルの『血を吸うカメラ』がジェネオン・ユニバーサルが廉価版で発売されたので購入。初見は1999年のリバイバル上映時に扇町ミュージアムスクエアで。これまで10年以上前にCSから3倍モードで録画した退色したビデオで再見していただけだったが、早速画質チェックしてみるとハッとするほど鮮やかな色彩だったので喜ぶ。

『私版 河合・大都映画(1)河合映画の作品抄』『私版 河合・大都映画(2)河合映画の男優女優』

 大都映画についての知識は少ない。せいぜいフィルムセンターで『松風村雨』など数本観たことがある程度で、昨年相次いで『幻のB級!大都映画がゆく』と『巣鴨撮影所物語―天活・国活・河合・大都を駆け抜けた映画人たち』が出版されたので、とりあえず前者を読んでみたぐらいだ。
 古書店に長谷部敏雄著の『私版 河合・大都映画(1)河合映画の作品抄』『私版 河合・大都映画(2)河合映画の男優女優』という自費出版2冊があったので各千円と安くなかったが、ちょうど銀座シネパトスで大都映画の『怪電波の戦慄 第二篇 透明人間篇』が今月の16〜18日にかけて上映されるので、2年前のフィルムセンターでの上映時には観損ねていたので喜んでいた身としては、再び大都映画への興味が出ていたこともあり購入。 

幻のB級!大都映画がゆく (集英社新書 478F)

幻のB級!大都映画がゆく (集英社新書 478F)

巣鴨撮影所物語―天活・国活・河合・大都を駆け抜けた映画人たち

巣鴨撮影所物語―天活・国活・河合・大都を駆け抜けた映画人たち

『「ゴジラ」東宝特撮未発表資料アーカイヴ プロデューサー・田中友幸とその時代』

 幻の映画に惹かれる。映画は完成すると途端に色褪せてしまうが、幻の映画たちは未完成ゆえにいつまでも空想上のスクリーンで遥かに美化されて映し出されているからだ。
 実際には完成しなかった、あるいは完成しても陽の目を見ないままオクラ入りになった映画たちは公になっているものだけでも枚挙にいとまがない。それも企画段階、脚本段階までで終わった映画たちとなると、もはや把握しきれるものではない。それでも脚本まで完成していれば形として残っているだけまだ良い。インタビューなどでこんな映画をこの監督でやる企画があったと読むだけでは、果たしてどの程度具体的に映画化しようという動きがあったのか、それとも居酒屋での会話レベルだったのかすら判然としないまま後世の記録に残ってしまうこともある。宍戸錠谷啓共演のザルソバ・ウエスタン企画があったらしいと聞かされても、一次資料は何処かと思えば『小林信彦60年代日記』に載っている居酒屋での会話だったりするものだから、これはこの場で出ただけの話だろうというオチがつくこともある。
 幻の映画たちを具体的に知りたい。企画書、プロット、シナリオといった具体的な痕跡を読みたい。監督についてまとめられた本や、シナリオ集などで読む機会もあるが、まとめて読むことはできないだろうか。それこそ東宝特撮の……という思いを抱いたことは一度や二度ではない。古書店でそういった未製作作品の準備稿が流出することもあるが、一般映画はそうでもないが東宝特撮となるとそのシナリオの表紙を拝むのが精一杯で中身を読む機会は全くない。こちらは、高い金を出してレア脚本をコレクションしたいわけでも、そういう企画があったということだけを知りたいわけではない。内容を全文読みたいのだ。
 しかし、そんな本はまず出ない。特定の監督や脚本家の仕事をまとめたものなら兎も角、東宝特撮などという括りでは難しいのは東宝がそんな企画に乗るわけがなく、また売れるわけもないのだ。完成してもいない映画について延々と語り合うことは、自分の周りでは珍しいことではないが、そんなことを喋り合っている人たちは自分も含めてロクなもんじゃない。存在しない映画について語ることは無益な行為でしかないのだから。
 そんな無益な行為を堂々とやってのけたのが、本書の編集に当たった木原浩勝、清水俊文、中村哲という各氏で、まえがきで木原氏は「完成することもなく机上のままで終わった脚本、プロットが、それも特撮映像に限ってまとめ上げられるということは空前であり、絶後かもしれないと思う。」と書いているが、正に下記の目次を読んでもらえればわかる通り、絶後となる可能性が高いような作品が並んでいる。よく出版できたものだと驚くしかないが、それも角川書店から450ページを超える大冊として出たのだ。その過程についてはあとがきにも書かれているので参照すれば一端は理解できると思う。ようはプロデューサー・田中友幸生誕百年と、ゴジラシリーズが現在停止しているのが幸いしたようだ。現在新作が製作されている最中であれば、旧作上映同様こういった企画に難色が示されたのではないかと思う。

 今回掲載されているプロットや脚本で、その存在自体が全く知られていない作品はかなり少ないと思う。製本されたシナリオの表紙やプロットを書いた原稿用紙がネットや特典映像などで目にする機会があるものも含まれているからだ。しかし、肝心の内容を全文読むことができなかっただけに、どのページを開いても驚きの連続で、眉村卓の84年版『ゴジラ』向けのプロットだとか、『ゴジラの逆襲』の後に書かれたシリーズ3作目となる『ゴジラの花嫁?』、関沢新一が書いた『続キングコング対ゴジラ』のプロットやら『フランケンシュタインゴジラ』やらザクザク出てくる。
 個人的には、リアルタイムで観ているゴジラシリーズということも大きく起因しているのだろうが、大森一樹による『モスラvsバガン』の脚本に喜んだ。『ゴジラvsビオランテ』に続く怪獣映画として準備されていた企画で、本作の存在は『ゴジラvsモスラ』公開時に公にされたが同作がつまらないせいもあって、『モスラvsバガン』が実現していれば良かったのにと当時思ったものだ。一方、関沢新一和田嘉訓という異色の共同脚本の『空飛ぶ戦艦』や、掛札昌裕の『火焔人間』『透明人間対火焔人間』といった作品が読めるのも驚きで、84年版『ゴジラ』と『ゴジラvsビオランテ』にページが費やされているが、こういった未製作の東宝特撮をもっと読みたいと思ってしまう。
 本書はただのレア脚本掲載書ではない。タイトルにある“プロデューサー・田中友幸とその時代”を表出することに掲載脚本のセレクトからも窺える。最も特徴的なのは1950年に書かれたらしい『ゴジラの花嫁?』が84年版『ゴジラ』製作時にも甦ってくるくだりだが、驚かされたのは昭和ゴジラで役割を終えたかと思われていた関沢新一に『ゴジラvsビオランテ』の公開後もまだ新作ゴジラの脚本を発注していたことで、ビオランテと争った公募脚本のプロットを元に『ゴジラ伝説 アスカの要塞』が書かれ、ビオランテと同時並行的に執筆が進んでいたようだ。大作を手がけるプロデューサならば、幾つかの脚本を同時発注することは不思議ではないが、リニューアルした筈のゴジラの世界に80年代後半から90年代前半にかけて突如甦ってくる関沢新一ゴジラ脚本というのが何とも興味深い。最も内容的にはまだ全部読めていないが、『スーパーマンIII 電子の要塞』を更に上回るイージーな解釈のコンピュータ制御された要塞とゴジラが戦うのだが……。
 権利関係の問題で今回収録できなかったという『宇宙の戦士』(!)や『ゴジラバットマン』のプロットなど、『ゴジラvsデストロイア』の石野陽子のセリフを引用すれば「やはりあれは二度と開けてはならないパンドラの函」をここまで開けてしまったからには、是非全部出して欲しいと思う。

第1部 1984年版「ゴジラ
  解説 1984年版「ゴジラ」制作の経緯について 清水俊文 
ゴジラ』(プロット+メモ) 眉村卓 
ゴジラの復活』(プロット) 光瀬龍 
『God‘s Godzilla 神々のゴジラ』(プロット) 荒巻義雄 
『中編小説 スーパーゴジラ 神々の怒れる使者』 荒巻義雄 
ゴジラの花嫁?』(シナリオ第三稿) 海上日出男 
ゴジラの復活 第2稿』(プロット) 中西隆三 
  中西隆三氏「ゴジラの復活」に対する田中友幸氏の注文 所健二 
ゴジラの復活 第3稿』(プロット) 中西隆三 
『KING of MONSTERS ゴジラの復活』 検討稿(印刷台本) 原案 神宮寺八郎  脚本 村尾昭中西隆三 
ゴジラの復活』(企画書) 田中友幸  
  プロデューサー・田中友幸の想い出 富山省吾
  作品解説 清水俊文


未発表写真集1 


第2部  ゴジラvsビオランテ
解説 「ゴジラvsビオランテ」とシナリオコンテスト 清水俊文 
ゴジラビオランテ』(プロット) 木暮瞬(小林晋一郎) 
ゴジラビオランテ』(プロット第2稿) 木暮瞬(小林晋一郎)
ゴジラ伝説 アスカの要塞』 第二稿(シナリオ) 関沢新一 
『SOS日本! ゴジラ特攻作戦』(プロット) 山浦弘靖 
『二匹のゴジラ 日本SOS!』(シナリオ) 斯波一絵 
  作品解説 木原浩勝


未発表写真集2


第3部  幻の未製作作品集
  解説 企画の成立と未製作作品について 清水俊文
『続キングコング対ゴジラ』(プロット) 関沢新一
『X号作戦』(プロット) 不明
フランケンシュタイン対ガス人間』(第一稿) 関沢新一
フランケンシュタインゴジラ』(検討用台本第一稿) 木村武
『空飛ぶ戦艦』(プロット) 不明
『空飛ぶ戦艦』(検討用台本第一稿) 関沢新一和田嘉訓
『火焔人間』(検討用台本第一稿) 掛札昌裕
『透明人間対火焔人間』(検討稿台本第一稿) 掛札昌裕
モスラvsバガン』(検討稿台本第一稿) 大森一樹
  未製作作品リスト
  作品解説 中村哲


未発表写真集3


総論 ゴジラシリーズと東宝特撮映画の流れ 中村哲

終わりに 木原浩勝

『リトル・ブッダ』『K-19』『海賊版=BOOTLEG FILM 』『カルロス』『ダブル・パニック'90 ロス警察大捜査線』『SCORE2 THE BIG FIGHT』

 近所に期間限定の中古ビデオ店が頻繁に出没するので、帰り道に無駄な出費を余儀なくされる。50円〜150円で買えてしまうのだから仕方ないが、今回購入した分に関して言えば、Wってる可能性が高いものが多いのだが、直ぐに自室から出てこないなら買ってしまえということで。
『リトル・ブッダ』は言うまでもなくベルナルド・ベルトルッチ監督作。『シェルタリング・スカイ』から劇場へ観に行くようになったが12歳のガキにはわかんないって。だから『リトル・ブッダ』はようやく年齢的にも理解可能かつ『ラストエンペラーII』的なオリエンタリズムあふれる歴史劇を観られると期待したのだが……。ちなみに同じ年に『時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!』を同じような期待で観に行ったがこれにも困惑。
 『K-19』はキャスリン・ビグローをはじめて良いと思った作品だが、それ以前の作品も見返さなくてはと思っている内にオスカー監督になってしまった。『ハート・ロッカー』は物売りの子供を探すシークエンスが長過ぎると思ったが、爆弾映画好きとしてはたまらない作品だった。
 『ダブル・パニック'90 ロス警察大捜査線』はジミー佐古田フルハム三浦を追った人)の原案を佐藤純彌の脚本で深作欣二が監督したテレビ映画。前年には同じく佐古田の原案で佐藤純彌が監督した『ロス警察1989』が製作されており、共に日曜洋画劇場の特別枠で放送された。全盛期の深作を体感している人からすれば、こんなモノはという作品だろうが、自分は初期の深作体験がこれだったりする。小学生が『華の乱』を観るわけがないし、『いつかギラギラする日』は2年後なのだから、深作のアクション映画のリアルタイム体験はこの作品。その後見返していないのでほとんど覚えていないがビデオが発売されていたことすら知らなかった。ディレクターズカットで再編集してあるらしいが、50円で売っていたら買うしかない。
 そういえば、ものすごく適当に1本選んで買う男がいたので妙に思ったが、レジの店員にセロテープでVHSのツメを塞いでくれと頼んでいるのでいよいよ驚いた。「生テープが売ってなくて」と言っていたので、つまり消去して生テープの代わりに中古ビデオを買ったらしく、いまだにセッセと中古ビデオを買っては持ち帰っている身としては複雑な気分になった。

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