映画 「サヨナラCOLOR」

molmot2005-11-13

219)「サヨナラCOLOR」(ユーロスペース) ☆☆☆★★

2004年 日本 ZAZIE FILMS Inc カラー ビスタ 119分
監督/竹中直人    脚本/馬場当 竹中直人    出演/竹中直人 原田知世 段田安則 雅子 中島唱子

 竹中直人の作品は、まばらにしか観ていない。「119」と「東京日和」のみ。何故か中古ビデオを持っているのに、原作も大好きなのに「無能の人」は未見だし、「連弾」も観ていない。しかし、「連弾」以前にクランクイン寸前に潰れた「東子」の脚本は持っている。妙なハナシだと自分でも思うが仕方ない。
 「119」と「東京日和」もとても好きな作品だった。「東京日和」あたりから竹中直人の監督としての評価は下がったが、あのセンチメンタルの度が過ぎるのは決して嫌いではない。しかし、「東京日和」があれだけヒットしたのに以降あまりスムーズに作品が撮れていないのは何故か。「東子」が潰れた時など驚いた。
 「サヨナラCOLOR」も愛すべき佳作に仕上がっていて、心地良い時間を過ごすことができた。「少々おむづかりのご様子」などを愛読していたので、学生時代のエピソードの大半はそのまま実話を基にしており、竹中直人の自伝的要素が極めて強い作品だ。屋上からぶら下がったり、夕方に山から叫んだり、教師達のエピソード、果ては原田知世演じる女性の名前まで、「少々おむづかりのご様子」にあった通りで、あまりにも自身を投影し過ぎているので、受け付けないヒトも居るだろうが、微笑ましく観ていられたし、竹中的な笑いを大胆に取り入れながら、全くバランスを崩していない。
 しかし、何より驚いたのが原田知世だ。他人の性癖をどうこう言う気は更々ないし、敢えて言うなら感染症には気をつけてと言うくらいの、原田知世、貴和子姉妹や早見優名高達男らの趣味は有名だが、この作品で原田知世はカミングアウトしている。いや、させられていると言うべきか。大体、開巻近くで段田安則原田知世の横での放屁するのもいつもの竹中直人らしさなどと流せなかったのは原田知世が居るからで、更に海岸で段田が放尿している姿を原田が恍惚の表情で見つめる段階で、これは竹中直人はどういうつもりなのかと驚き、そして売店のシーンでは井口昇を登場させ、原田とBSのツーショットを見せるのである。これはもう狙っているどころの騒ぎではない。井口昇原田知世というその世界の二大巨頭夢の共演である。更に極めつけが竹中と原田が海岸で連れションし、原田は『クセになりそう』とまで言うのである。いくら竹中直人の自伝的要素が強いからと言って、原田知世も自身がやっていたバレエの要素を作品中に入れるくらいで止めておけば良いのに、彼女のそんなことまで劇中に取り込む必要があったかどうか。恐らく井口昇との出会いを竹中直人は作ってあげるために1シーン用意したのだろうが、井口昇監督作品で原田知世の勇士が観られる日も近いに違いない。
 作品の底辺には人間の性癖までをも配置した作品だが、ベテラン馬場当の脚本を未だ読んでいないので、どう脚色したか比べていないが、馬場当の脚本を使ったのは良い。
 ラスト近くが少ししつこく95分からせいぜい100分に収めておけば、もっと良かった。(続く)

 尚、狙っていたわけではなく、偶々予定が空いたので見逃していた本作を観ることができたが、今日がユーロスペースの閉館日で、レイトショーの本作が最終上映作品だった。別にユーロスペースがなくなるわけではなく再来月には新天地でオープンするのだし、ここは別会社が入って来月にはまた映画館として運営が始まるのだから、これほどケッコーなハナシはない。何せ90年代末の大阪ミニシアターの激増と、あっという間の終焉を見ているので、何ら感慨はない。愛着があったシネマワイズやシネヌーヴォ梅田や第七藝術劇場が次々と閉まってしまい、大阪で観ることのできるミニシアター系の作品が激減した。それに比べればユーロスペースなど、もう古いし良い作品やってる割に狭く、混んでいる時など後ろに座ると前の頭が邪魔で随時画面が遮られたりしたのだから、移転はケッコーなハナシだ。
 それにしても最終上映は通路いっぱいの立ち見が出る盛況で、流石ユーロスペースだ。終映後は本作の配給会社がワインを振る舞い、出入り口前で皆帰り難くしているという、場としての映画館、ミニシアターの理想的空間が広がっていた。移転後も魅力溢れる映画館であることを。