『少女は挿入される生き物』

『少女は挿入される生き物』 (DVD) ☆☆☆★

2006年 日本 ハマジム カラー スタンダード 130分
監督/堀内ヒロシ     出演/ねね ひな ゆめ
少女は挿入される生き物 [DVD]  
 昨年さんざん話題になったAVだけに今更だが、話題になるだけのことはある作品だった。
 開巻と終盤に語られる詩が、青いながらその青さが妙に印象に残って引っ掛かってくるが、本編で描かれる3人の少女の見せ方が器用に分けられていて、3人中2人は丁寧にカラミを撮っていて、最後の1人でドキュメント要素を多分に入れ込んだものになっている。ここまで器用にAVの両極端な要素を共に入れてあると、確かにお得感はかなりあり、AVをヌク為にもドキュメンタリーとして観る為にも利用するという側からだと、満足度は高いのではないかという気がする。実際自分も両方の要素を楽しめた作品だとは思った。

 以下、構成に沿って書くと、一人目は「少女1 お留守番 ねね」。
 しっとりと見せる描写が印象的で、ゆったりとしたテンポで、唾液の受け渡しや糸を引く唾液などを丹念に見せていて見入ってしまう。そういったゆったりとした描写から電動歯ブラシが唐突に画面に登場してからは、順にバイブとなるが、バイブを挿入する瞬間はなく、タイトルにあるような少女が挿入される瞬間こそが作品の核であろう本作だけに、見せなくて良いのかと早合点したが、その後の性器の挿入はじっくり見せているた。ここでも印象に残ったのが、男がアナルを舐める際に伸びる唾液の糸と、舌の感触で、その触覚的感触が伝わってきて良かった。
  二人目は「少女2 密室援助交際 ひな」。
 一人目に比べると描写の濃密さには欠けるが、その分エロさは作品中随一で、個人的に穴あき水着にバイブを挿入するシチュエーションは好みなので、エロさを普通に楽しんだ。 
 そして、三人目は「少女3 近親相姦 ゆめ」。
 登場した時から既に典型的な情緒不安定女子っぷりを発揮しているので、過剰な期待を抱きつつ見入っていたが、パイパンで表情のつけ方から、喘ぎ声がクワッ、クワッ、クワッ、という奇声を出すところまで想定内で、もう少し面白い子が良いという個人的感情は兎も角、カラミ自体はそう面白くないままに中出しして終了。

 
 以下、後半のネタバラシも含めて書くが、このカラミのシチュエーションは、父が娘をロリコン友の会に連れ込んで、父を主にみんなで犯すというドラマ仕立てになっていて、前2編との極端な差を感じつつ観ていたものの、実際に本編が動き出すのはカラミが終わってからで、撮影終了後の男優達に監督が、このシチュエーションはあの子の実話をベースにしていることを告げる。それを聞いた時の男優達の表情が良いのだが、以降は彼女のドキュメンタリーとして展開する。
 ただ、だからと言って、待ってましたとばかりにガバっと起き上がって喜ぶというわけではなく、前2編の職人芸的巧みさでカラミを見せていっているのを観ているだけに、ドキュメントパートもそういった枠内の中で巧さを発揮するんだろうという予想を持って観ていた。
 彼女の生い立ちは、父母が彼女を妊娠と同時に離婚し、10歳の時に母が再婚するも、当初から彼女狙いで義父は再婚したらしく、その頃から関係が始まっている。母を気遣い言い出せなかった彼女は中2の頃に祖母に言って家を出るまでその関係が続いていた。
 監督らは、彼女と共に千葉県の実家を探す。近所まで来ると彼女の記憶が鮮明になってきて、家を見つける。薄れていた記憶から幼少時の原風景が甦る様は、これまでにも幾つかの作品でも繰り返し観て来たが、その度にスリリングな思いを感じる。
 家が迫ると義父に会いたくないと言い出す彼女のグズりっぷりやら、ピルの副作用やらは、個人的な嫌な記憶をクリティカルヒットしてきて、正視に耐えなかったが、監督は、実は既に義父に連絡を取っており、会う手筈を整えていることを告げる。諸々難癖をつける彼女を説得して、彼女は義父と対面するところで終わる。
 観終わってまず思ったのは、最初の第一声だけで良いから、義父との会話を聞かせて欲しかったことで、別に父親探しのドキュメントが全て対面するところまで見せなければイケナイなどということはなく、河瀬直美の『につつまれて』にしても、ラストカットに父親は登場するものの、そこで何を会話したかや、対面シーンへの興味は無かった(それ以前に電話で話しているせいもあるが)。本作の場合は、彼女は全く主体的に動かず、全てのお膳立てをスタッフがやり、又、彼女がグズった際の説得も一貫して堀内ヒロシのペースで強引に進むので、彼女からの決断が見られないお人形状態なので、観ている最中の興味が、彼女が最後に何を話すか、或いはせめて第一声に彼女が何を言うかという箇所に集約されてしまったので、そこを外されると、作品事態が形骸化して見えた。或いは、時制をもう一度冒頭のロリコン友の会の再現シーンへと戻し、彼女の言葉を拾ってくれると印象が変わったかもしれないとも思う。