大島渚著作集・全四巻発売

molmot2008-09-18

大島渚著作集〈第1巻〉わが怒り、わが悲しみ

大島渚著作集〈第1巻〉わが怒り、わが悲しみ

 新宿紀伊国屋書店でパンフレットを入手して発売を知った。
 大島渚のこれまでの著作から四方田犬彦・平沢剛編纂によって全四巻の著作集が編まれるという。各巻の目次を読めば、既に古本で大島の著作を集めていた身からすれば読んだことがあるものが多そうだが、やはりこれだけ一挙に集められると迫力が違う。大島と同年齢の小林信彦が『定本日本の喜劇人』を出したように、何かこの世代の代表者たちの業績がまとめられている時期なのかとも思う。
 ちなみに大島と小林の関係は、かつて大島が『ちんころ姐ちゃん』の監督を小林に依頼するところから始まり、『白昼の通り魔』に小林が出演したり、結果的には小林が断って松田政男が演じたものの、『絞死刑』への出演オファーなどがある。
 『大島渚著作集』に話を戻せば、最近、大島と内藤誠が共同脚本で80年代頭に東映京都で映画化しようとした『日本の黒幕』が本に収録されるという噂を聞いていたので、どういった体裁で掲載されるのだろうと思っていたが、本書に、未映画化脚本『日本の黒幕』『ハリウッド・ゼン』が掲載されると知り、納得した。
 『日本の黒幕』は大島降板後、降旗康男の監督で完成したが、『夏の妹』以降は現代日本を舞台に選ぶことが無かった大島が現代劇でテロリストの映画を撮るという、実現していれば大島のフィルモグラフィーを揺るがす作品になったと思われるだけに、はじめて公になるこの脚本は、大島研究の上でも貴重な資料となるだろう。確か、大島・内藤と高田宏治がそれぞれ脚本を書いて、完成してからドッキングさせるという試みと聞いたことがあるが、脚本としてはどの程度完成していたのだろうか。
 内容に関しては『ハリウッド・ゼン』も全く不明だったので、80・90年代の大島渚を読み解く上で重要なものになるだろう。
 ちょうど紀伊國屋書店から、かつてポニーキャニオンからDVDが発売されていた創造社・大島プロダクション時代の作品をBOXシリーズでのリリースが始まるので、大島渚再評価の時期が来たというべきか。

大島渚著作集 全四巻
この著作集は、映画監督である大島渚の半世紀以上にわたる著述のなかから、四つの主題の系列を選び、四巻に再録編集したものである。


第一巻 わが怒り、わが悲しみ            
第一回配本 2008年10月

著者の自伝的な文章を軸として編み、その初期における達成点ともいうべき脚本『深海魚群』を収録。


第二巻 敗者は映像をもたず             
第二回配本 2008年11月

著者のドキュメンタリー映画体験から導き出されたこのテーゼを中心に、映像と歴史、映画と政治の関係をめぐって執筆された文章を収録。


第三巻 わが映画を解体する             
第三回配本 2009年1月

松竹時代から『御法度』まで、著者が監督したフィルムについての自註的文章を収める。東映のヤクザ映画『日本の黒幕』の幻の脚本を初公開。


第四巻 敵たちよ、同志たちよ             
第四回配本 2009年3月

内田吐夢から若松孝二足立正生ゴダールにいたる、同時代の映画監督についての論考を収め、さらに幻の大作『ハリウッド・ゼン』の脚本を本邦初公開。


◆各巻に四方田犬彦解説。ゲスト解説としてローランド・ドメーニグ、宮田仁、マリア・ロベルタ・ノヴィエッリ、宮尾大輔が執筆。
◆各巻に大島渚の写真一葉を口絵として付す。
◆各巻予価 2800〜3600円(税別)
◆体裁 四六判上製本 280〜340頁
詳しくは『大島渚著作集 第一巻』の紹介をご覧下さい。


http://www.gendaishicho.co.jp/news/n43.html

大島渚 1 - 飼育/忍者武芸帳/絞死刑 [DVD]

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