『市川崑大全』『映画秘宝 2009年2月号』

市川崑大全

市川崑大全

映画秘宝 2009年 02月号 [雑誌]

映画秘宝 2009年 02月号 [雑誌]

 諸事情で告知が大幅に遅れてしまいましたが、洋泉社より発売中の単行本『市川崑大全』と、本日発売の『映画秘宝 2009年2月号』に寄稿しております。

 『市川崑大全』には、「新旧『犬神家の一族』比較研究」「『幸福』〜エド・マクベインの傑作ミステリ」「文芸と実験〜吾輩は猫である」「油断禁物 珍作クロニクル(早過ぎた暴走作)」「市川崑のセルフリメイク作品たち」「市川崑・幻の企画たち」「フィクションとしての『東京オリンピック』」「こんな仕事も市川崑印」等を本文に書いております。それから巻末の「市川崑全作品紹介」で劇映画の解説を46本担当しております。結構大量に書かせていただき、市川崑市川崑と言い続けていた身としては、今回ばかりはひとつ、是非手に取ってもらえれば相当嬉しいです。よろしくお願いします。

 『映画秘宝 2009年2月号』には、『愛のむきだし』特集にレビューを寄稿しております。『愛のむきだし』は来年1月下旬からユーロスペースを皮切りに公開となりますので、西島隆弘さんと園子温監督のインタビュー、高橋ヨシキさんのレビューを読んで期待を高まらせてもらえればと思います。
 個人的には来年のベストワンは『愛のむきだし』で間違いないなと思っています。東京フィルメックス、サンプルDVD、試写と計三回この作品を観ましたが、まだ飽きず大傑作と断言できる作品です。12時間をこの作品を“観る”為に費やしても些かの後悔もないです。



 『市川崑大全』は、今年2月に亡くなった市川崑監督のフィルモグラフィーを縦横無尽に解体した本になっていて、石坂浩二さんや、岩井俊二監督、手塚昌明監督、中村敦夫さん、小西康陽さん、編集の長田千鶴子さんといった関係者の方々のインタビュー他、金田一シリーズの解析、文芸、実験、時代劇、ドキュメンタリー、アニメーション、テレビ、CMに至るまで多面体の市川崑監督に相応しく、あらゆる視点から作られた本になっていて、映画秘宝編集部・編だけあって、濃密さにかけては、これまでの市川崑関係の本とはかなり異なるものになっているかと思います。
 執筆者には、市川崑となればこの方以前と以降で全く時代が変わったと言って良い森遊机さんや、ミルクマン斉藤さんに加え、磯田勉さん、轟夕起夫さん、尾崎一男さんといった映画秘宝本誌でもおなじみの方々も書かれています。そして真魚八重子さんも参加されていますが、打ち合わせの席で真魚さんと解説用の作品を折半している時など、何故市川崑の作品の解説を真魚さんと分けているのかと不思議な気分になりました。何せ、私のブログに真魚さんのブログから最初にトラックバックを貰ったのは、このブログを始めて間もない頃のフィルムセンターで『幸福』を観たことを書いた時のものだったので。そういえば今年、まだ『市川崑大全』の依頼が来る前に新文芸坐で『幸福』を観ていると、席を立った途端に真魚さんと偶然顔を合わせたりと、市川崑の『幸福』を通して妙な縁を感じたりもしました。結果本誌で本文と作品解説でそれぞれ『幸福』について書いているのだから、正に縁だなと。そんな真魚さんは「初期実験作横断」や「金田一シリーズ最大の謎、回想の娘時代」「市川崑の男優たち〜外しの美学」や「油断禁物 珍作クロニクル」といった役者の側からの視点で書かれているものが多いのですが、これまでの市川崑論にない新鮮な視点でかなり面白いです。私はどうしても、森卓也和田誠森遊机ミルクマン斉藤といった方々の市川崑論の絶大な影響下でしか書けないのですが、真魚さんはそこから軽やかに離れた自由な視点で市川作品を書かれていて、今後はこういった視点で市川崑を捉える人が出てくると、より面白い状況になるのではないかと思います。
 一市川崑ファンとして読んでも、貴重な証言も随分と含まれています。磯田勉さんが『股旅』の主演に沢田研二が候補に挙がっていたとか、『ビルマの竪琴』を70年代にもリメイクしようとしていたとか書かれていますし、何より岩井俊二監督のインタビューで明かされる幻の『本陣殺人事件』の全貌。これには驚きました。実現していたらとんでもないことになったのではないかと。そして気になっていた岩井監督はその企画を今後どうする気なのか?という点にも言及してありました。普通の映画誌では、ポシャった企画については熱心に聞こうとしない、または聞いても記事にならないことが多く、幻の企画好きとしては、今回『本陣殺人事件』の全貌が明らかになったのは、狂喜せんばかりでした。
 とにかく濃くて、様々な視点が交錯する本になっているかと思いますので、是非一読ください。

市川崑大全 KON ICHIKAWA1915-2008

市川崑大全

市川崑大全

グラビア
市川崑ヒストリー

市川崑のミステリ映画
 久里子亭の仕事 (磯田勉)
 東宝金田一シリーズクロニクル (山田誠二)
 石坂浩二インタビュー (取材・轟夕起夫/構成・「映画秘宝」編集部)
 新旧『犬神家の一族』比較研究 (モルモット吉田
 <事件ファイル・1>犬神家の一族 (馬飼野元宏
 <事件ファイル・2>悪魔の手毬唄 (馬飼野元宏) 
 <事件ファイル・3>獄門島 (馬飼野元宏
 <事件ファイル・4>女王蜂 (馬飼野元宏
 <事件ファイル・5>病院坂の首縊りの家 (馬飼野元宏
 <事件ファイル・6>八つ墓村 (馬飼野元宏
 『幸福』〜エド・マクベインの傑作ミステリ (モルモット吉田


モダニスト市川崑
 大胆に実験を繰り返した前衛作家 (尾崎一男
 初期実験作横断 (真魚八重子
 『黒い十人の女』〜クールな傑作 (ミルクマン斉藤
 モダニスト市川崑の真髄 (ミルクマン斉藤
 小西康陽インタビュー (轟夕起夫
 幻のデビュー作『新説カチカチ山』『娘道成寺』 (尾崎一男
 市川崑SF映画竹取物語』 (石上三登志・談/聞き手・「映画秘宝」編集部)
 実写とアニメの壮大な融合〜『火の鳥』 (神武団四郎
 文芸と実験〜吾輩は猫である (モルモット吉田
 2000年の人形劇〜『新選組』 (神武団四郎
 油断禁物 珍作クロニクル 「早過ぎた暴走作」(モルモット吉田)/「愛すべき失敗作」(真魚八重子
 金田一シリーズ最大の謎、回想の娘時代 (真魚八重子
 市川崑のセルフリメイク作品たち (モルモット吉田
 『鹿鳴館』とバブル時代の市川崑映画 (杉森哲郎)


市川崑の時代劇
 モダンと伝統のはざまで―崑流時代劇のつくりかた (磯田勉)
 木枯し紋次郎の誕生 (山田誠二) 
 中村敦夫インタビュー (取材・文/加藤義彦)
 股旅〜青春映画としての時代劇 (磯田勉)
 『どら平太』と「四騎の会」 (磯田勉)


市川崑の文芸映
 市川崑はいかに文学を改変するか (轟夕起夫
 和田夏十の仕事 (轟夕起夫
 岩井俊二が語る、幻の『本陣殺人事件』 (取材・文/尾崎一男馬飼野元宏
 市川崑・幻の企画たち (モルモット吉田
 市川崑吉永小百合 (佐藤利明
 『細雪』の秘密 (馬飼野元宏
 プロデューサー藤井浩明が見た市川崑 (取材・文/轟夕起夫馬飼野元宏
 『ビルマの竪琴』『野火』―市川崑の戦争映画 (大久保義信
 市川崑の男優たち〜外しの美学 (真魚八重子


市川崑のドキュメンタリー
 芸術にも記録にも与することなく。ドキュメンタリスト、市川崑の肖像 (磯田勉)
 フィクションとしての『東京オリンピック』 (モルモット吉田
 『太平洋ひとりぼっち』〜孤独と疎外の物語〜 (森遊机


市川崑の映像技法
 市川崑の映像テクニック一覧 (尾崎一男モルモット吉田、「映画秘宝」編集部)
 長田千鶴子に聞く、市川崑映画・編集の秘密 (聞き手・尾崎一男馬飼野元宏/構成・映画秘宝編集部)
 手塚昌明に聞く、間近で見た市川崑 (取材・尾崎一男/構成・映画秘宝編集部〉
 市川崑スタッフ名鑑 (磯田勉)
 市川崑映画の音楽世界 (鈴木啓之
 Kon Respect〜市川崑の影響が観てとれる作品群 (神武団四郎
 市川崑のテレビドラマ (加藤義彦)
 幻の市川崑ドラマと脚本家「久里子亭」秘史 (小山正)
 市川崑のCMたち (森遊机
 こんな仕事も市川崑印 (モルモット吉田
 愛と孤独とさすらいの作家 (森遊机


市川崑全作品紹介
(磯田勉、轟夕起夫真魚八重子ミルクマン斉藤モルモット吉田) 


監督以外の全作品リスト
テレビドラマ作品
市川崑DVD作品
市川崑あの本、この本